毎年、日本列島に影響を与える台風。
発生するたびに強風や大雨への警戒が呼びかけられますが、もし台風の数が少なかったら、どんな年になるのでしょうか?
一見、台風が少ない年は「平和で良い年」というイメージを持ちがちですが、実は意外な影響も潜んでいるんです。
こちらでは、台風が少ない年に起こりやすい特徴やその影響について詳しく解説していきます!
台風が少ないとどうなる?
台風が少ないと聞くと「災害が減って安心」と思うかもしれませんが、実はそれがもたらす影響は意外と大きいんです。
水不足
まず、水不足のリスクが増加します。
台風はダムや地下水を潤す重要な役割を担っており、台風が少なくなると降水量が減少し、水資源が不足しがちです。
特に夏場はこの影響が顕著で、農作物へのダメージが懸念されます。
必要な水分を得られないことで、作物の収穫量が減少し、経済や食生活に影響が及ぶことも。
熱中症のリスク
また、台風がもたらす強風や雨は一時的に気温を下げる役割も果たしています。
それが減ることで夏の猛暑が続く期間が長引き、熱中症のリスクが高まる可能性があります。
一方で、風水害のリスクは減るものの、長期的な干ばつや農業の被害など、新たな災害リスクが生まれるのも見逃せないポイントです。
スーパー台風の発生頻度が増える
さらに、気候変動の影響で、台風の数が減る一方で、非常に強い台風の発生頻度が増えると予測されています。
つまり、台風の数が減ったからといって災害のリスクが消えるわけではありません。
防災意識を持ちながら、気候の変化に適応していくことが大切ですね。
台風が少ない年はどんな年?
台風が少ない年には、さまざまな特徴や傾向が見られます。
例えば、2023年は9月の台風発生数がわずか2個で、平年の5個を大きく下回り、統計開始以来の最少記録に並びました。
また、上陸数も1個と例年の3個に比べて少なく、台風そのものが発生しにくい年であったと言えます。
このような年には、フィリピン沖で高気圧が発達し、モンスーンが弱まることで台風が発生しづらくなる気象条件が背景にあります。
さらに、エルニーニョ現象が関与することもあり、エルニーニョが最盛期を迎えた翌年は、台風の発生数が少なくなる傾向があるのです。
ただし、台風の発生数が少ないからといって安心はできません。
非常に強い台風が発生しやすい
例えば、2023年には中心気圧が900hPa以下の猛烈な台風2号や台風15号が発生しており、過去にも1998年の台風10号(中心気圧900hPa)や2010年の台風13号(中心気圧885hPa)など、非常に強い台風が発生した例があります。
このように、数が少ない年でも強力な台風が被害をもたらす可能性があるため、警戒が必要です。
水不足のリスクが高まる
また、台風が少ない年は降水量が不足し、水不足のリスクが高まることも懸念されます。
特に、空梅雨や暖冬が重なる場合は深刻な水不足に直結する可能性があります。
そのため、台風が少ない年には、災害リスクが減少する一方で、別のリスクが浮上することを意識しておく必要がありますね。
台風が少ない年、記録的なのは2010年!
台風の発生数が最も少ない年として記録に残っているのが2010年です。
この年の発生数はわずか14個で、1951年の統計開始以来の最少記録を更新しました。
それまでの記録だった1998年の16個を下回り、気象史において特筆すべき年となっています。
経路の影響
2010年の特徴としては、日本への台風上陸数がわずか2個と少なかったことに加え、これらの台風がどちらも日本海側から上陸するという珍しい経路をとった点が挙げられます。
通常、台風は太平洋側から上陸することが多いため、この年の経路は非常に特異だったと言えるでしょう。
太平洋高気圧の影響
さらに、2010年はフィリピン東海上で太平洋高気圧の勢力が強く、発達した積乱雲が形成されにくかったことが、台風発生数の少なさに影響を与えました。
このような気象条件が重なった結果、台風発生数の記録的な少なさにつながったのです。
この年のデータは、台風が少ない年として顕著な例として、現在も気象の研究や議論の中で注目されています。
一見すると「台風が少ないのは良いこと」と思われがちですが、これが気候全体にどのような影響を及ぼすのかを考えると、まだまだ解明すべきことがたくさんありますね。
台風が少ない年にはこんな気象現象も?
台風が少ない年には、他の気象現象にも注目が必要です。
エルニーニョ現象と海面水温の上昇
たとえば、エルニーニョ現象が最盛期を迎えた翌年には台風発生が抑制されやすい傾向があります。
エルニーニョ現象の影響でフィリピン付近に強い高気圧が居座り、台風が育つ条件が整わなくなるからです。
同様に、インド洋の海面水温が上昇すると、そこに積乱雲が発生しやすくなり、結果的にフィリピン周辺の高気圧が強まるため、台風が発生しにくくなります。
ダムの貯水量が減少
台風が少ないと雨量が減少し、水不足のリスクも高まります。
特に空梅雨や暖冬と重なると、ダムの貯水量が減少し深刻な影響を及ぼすこともあります。
また、台風がもたらす一時的な気温の低下がないことで、猛暑が長引く傾向も見られます。
これにより、熱中症リスクが上昇するなど、健康面への影響も懸念されます。
ラニーニャ現象
さらに、台風の少ない年でもラニーニャ現象が発生した場合、日本では極端な気象が起こりやすくなります。
猛暑、大雨、干ばつなど、自然災害が重なるリスクがあるため注意が必要です。
2024年にはラニーニャ現象の影響が予測されており、台風の発生数が少ないからといって安心できない状況となりました。
気象現象は非常に複雑で、一概に「台風が少ない=良い年」とは言い切れません。
むしろ、ほかの異常気象が起きやすい年とも言えます。
台風が少ない年こそ、冷静な観察と備えが求められるのですね。
まとめ台風が少ない年は、自然災害のリスクがどう変わる?
「台風が少ない年だから、災害の心配が減る」というわけにはいきません。
むしろ、気候変動の影響で自然災害のリスクは多様化・複雑化しています。
たとえば、台風が少ないと降水量が減少し、水不足のリスクが高まります。
特に春以降の水利用に影響が出る可能性があり、渇水対策が急務になります。
短時間強雨の頻度の増加
一方で、台風の数が減少しても、短時間で激しい雨が降る「短時間強雨」の頻度は増加傾向にあります。
このような雨は、河川の氾濫を引き起こしやすく、洪水リスクが依然として高い状態が続いています。
土砂災害のリスクの増加
さらに、短時間強雨が増えると土砂災害のリスクも高まります。
地盤が耐えられずに崩壊する可能性があり、特に山間部では注意が必要です。
また、少雨と高温が続くと、農作物の生育に深刻な影響を与えるだけでなく、干ばつに伴う害虫の被害も増加します。
気候変動の影響は、極端な現象を増やす方向に進んでいます。
降水量が極端に少ない年と、逆に洪水を引き起こすほどの多雨が同時期に発生する可能性があり、対策が難しくなっています。
さらに、日本近海の海面水温が上昇しているため、台風の数が少なくても、発生した台風が非常に強力になるケースも増えています。
つまり、台風が少ない年であっても自然災害のリスクは決して低くなるわけではありません。
むしろ、リスクが変化し、より多面的な対策が求められる時代になっていると言えそうです。
防災・減災の取り組みを継続的に見直し、気候変動に対応した備えを進めることが重要なのですね。
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まとめ
台風が少ない年は、確かに災害リスクが減る一方で、気温が高めになりやすかったり、水不足や農作物への影響といった課題も浮かび上がります。
一見すると「良い年」のように思えますが、自然界では常にバランスが大事。
台風の数が減ることで見えてくる意外な影響に気づき、私たちの生活への備えを考えるきっかけにしてみてはいかがでしょうか?